創立15周年記念ネットフォーラム
  
      住産業に係る新技術の動向について
ネットフォーラムの企画について

(社)リビングアメニティ協会 広報部会長  村田 幸隆


 住産業が転換期を迎えている。戦後近代産業として量そして質に至る両面から成長を続けて来た住産業は、生活者の価値多様化、ライフスタイル変化に見られる成熟化、そして人口が減少しはじめる少子高齢社会の到来、情報革命とグローバル化、深刻さを増す世界的環境問題等を背景に大きく変化しはじめようとしている。それは住宅をマスで期待する時代から、質や新たなサービス、ビジネスへ変革を問う時代であり、膨大なストックを活用し利用しやすい形に改善し、再生していく時代である。しかも密集した都市居住地や、その一方で過疎化がすすむ地方や郊外地に対し新たな魅力ある住みよい街づくりをも求める時代である。
 一方で豊かさを享受している生活者がより高い満足を得るために、いかに住産業(あるいは新たな産業)が応えていけるのか、しかも知恵を結集して対処せざるを得ない環境対応の時代にどう立ち向かっていくのか問われる。更に情報革命は途上にあり、世界的な情報技術進化は新たなナノテクやホロイック技術等の革新技術進化が続き、それが生活に大きく関わってくると考えられている。
 住宅部品業界もまた、こうした社会状況や変化に真っ向から対処を余儀なくされ、積極果敢な努力があって、住産業の一翼として、生活者満足の大きな産業として発展できるものと考えられる。こうした視点でとらえるならば、現在台頭しつつある新たな技術について、その動向を把握し新たな枠組みを様々に想定し対応を図っていかねばならないであろう。
 ALIA NEWS 編集委員会では、マスコミや住宅業界等で話題性の高い技術、市場規模が大きく成長が著しいと思われる技術、今後の住宅・住宅部品業界や生活に大いに影響を与えそうな技術について項目をあげ議論をすすめ選定を試みた。その結果、以下の8項目を取り上げ、それぞれ専門の識者に説明いただくこととした。また、住宅業界の関係者からの取組みや考えを合わせて紹介させていただくこととした。ネットフォーラムの企画を進めるに当たりあらかじめ以下のように考えをまとめておいた。

(1)ユビキタスコンピューティング
社会のあらゆる場面にコンピュータシステムが登場しつつあり、どこでもコンピュータ技術を享受できる環境が整いつつある。それが生活社会を大きく変えることは想像に難くない。様々な生活場面に変化を与え、新たなサービスや生活ビジネスを生み出すであろう。生活者に新たな価値を生み、生活を補完する。市場も膨大に膨らむと推測。
(1)ユビキタスコンピューティングの行方
東京工科大学 片柳研究所 教授  松下 温
(2)ユビキタス・コンピューティング社会の建築像
竹中工務店 技術ソリューション本部 部長  宇治川 正人

(2)IT住宅
 住宅や住宅設備は生活者が安心して快適にすごすことができる機能を整え多様な生活スタイル、価値に対応できるようになったが、現状で充分とはいえない。小家族化が進む現在、成熟した生活者の利便性を更に向上させ、支援し、新たな価値創造の住宅を目指す大きな可能性はIT住宅にある。新たな空間づくりにセンサー技術、情報化技術が欠かせない。家電統合化、省エネ制御、映像、予測等目白押しの技術開発が進む。
(1)IT住宅 ホームオートメーションからネットワークサービスへ
(株)アティアス 代表取締役         
英国インペリアルカレッジ・イノベーション研究センター客員研究員  岩下 繁昭
(2)将来のIT住宅 「u-house」
住宅情報化推進協議会(ALICE)  生部 圭助

(3)光触媒技術
 社会インフラ整備が進む一方でインフラ保持技術の重要性も増す。浄化、脱臭効果からタイル、内外装材等の技術開発が進んだ光触媒技術であるが、土中有害物質浄化や水を介した冷却効果を高める建築応用等へ広がりを見せる。生活を変えていく技術応用の好例であり身近な技術として取り上げた。
(1)光触媒を利用する環境にやさしい建築材料
東京大学・先端科学技術研究センター  橋本 和仁
(2)光触媒技術と製品の開発
TOTO総合研究所  佐伯 義光

(4)マイクログリッドエネルギーシステム
 住宅や社会施設、商業施設等が関わる新たな街づくりが注目されるが、エネルギーを相互補完し利用効率を上げ、省エネ化、自然エネルギー活用等多彩なエネルギーマネージメントは、今後の国際的エネルギー需要構造変化の上でも重要性が高く、生活に大きく影響を及ぼすものと予想。
(1)マイクログリッドエネルギーシステム
国立大学法人東京農工大学大学院 教授  柏木 孝夫
(2)我が国でのマイクログリッドの意義及びその活用に向けて
(株)テクノリサーチ研究所 代表取締役  内田 二郎

(5)燃料電池システム
 パソコン電源、住宅用、自動車用エネルギーとして注目を集める。近い将来の本命技術とされるが、現在は多くの技術的課題を克服する時期。技術研究開発、インフラ整備が進めば水素エネルギー社会到来として住宅分野での活用期待が大きい。
(1)定置用燃料電池システムの技術開発動向と将来性
慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 教授  石谷  久
燃料電池実用化推進協議会 企画第2部 部長  里見 知英
(2)東京ガスにおける家庭用燃料電池コージェネレーションシステム開発
東京ガス(株) R&D企画部  西崎 邦博

(6)太陽光発電、太陽熱利用
 エネルギー自給率を高め、エネルギー利用効率をあげ、あらゆる場所からエネルギーを得る工夫や有効に熱・光を利用する技術開発は近い将来必須になるであろう。その本命技術のひとつが太陽エネルギー利用で、他のエネルギー手段との融合も課題となる。
(1)ソーラー建築設計における太陽と建築のエネルギー対決と調和
工学院大学名誉教授         
元日本太陽エネルギー学会会長  中島 康孝
(2)太陽光発電
(株)ミサワホーム総合研究所 エコエネルギー研究室長  栗原 潤一

(7)生活支援ロボット
 生活のあらゆる場面にロボットが活躍する時代が近づいた。近年のロボット技術の著しい進化と話題には事欠かない。介護、セキュリティ、掃除や片付け等の支援、癒し、エンターテイメント等幅広い分野で、しかも形態は多種多様。住宅空間そのものの概念が変わる可能性も秘める。
(1)人の心を豊かにするメンタルコミットロボット・パロ
産業技術総合研究所 知能システム研究部門          
科学技術振興機構 発展・継続研究  柴田 崇徳
(2)生活支援ロボットと住空間環境のデザイン
(株)東芝 研究開発センター 研究主幹  松日楽 信人

(8)健康、福祉サービス
 高齢化は社会と家族に多大な影響を及ぼし、今後数十年にわたり住産業に深く関わり合う。住宅と社会施設が連携し、補完しあう関係が強化される一方で、住宅に求められる機能整理も進む。社会サービスとの関連性から、生活概念すら変容していく。膨大な市場拡大分野である。
(1)本格的高齢社会に対応した社会保障の構造変革と民間参入への期待
(社)シルバーサービス振興会 企画部長  久留 善武
(2)高齢化社会に対応した居住環境整備の重要性
松下電工(株) エイジフリー事業推進部 事業企画担当課長  橋本良子

 なお、住宅・住宅部品業界や生活に関連し影響しそうな技術項目としては、ICタグ、セキュリティ、ナノテクノロジー等素材開発、ニューガラス、バイオマス、キャパシタ技術、メモリー等様々なものがあり、自動車センシング技術等も影響が大きいと思われた。新産業想像戦略では、日本が世界最先端の技術を有する先端7分野について政策を総動員して支援し、2010年に300兆円の市場規模に育てあげるとのことであり参考とした。住宅分野に深く関わりそうな分野の市場規模としては、情報家電 18兆円(文中(1)、(2)に関連)、ロボット 1.8兆円(文中(7)に関連)、健康・福祉・機器サービス 7 5 兆円(文中(8 )に関連)、環境・エネルギー・機器サービス 78兆円(文中(4)、(6)に関連)、燃料電池1兆円(文中(5)に関連)等とされる。
 本特集号が近い将来の関連技術に関する考え方整理の一助になれば幸いである。
社団法人リビングアメニティ協会