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| IT住宅 ホームオートメーションからネットワークサービスへ | |||||||||
(株)アティアス 代表取締役 英国インペリアルカレッジ・イノベーション研究センター客員研究員 岩下 繁昭 |
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われわれは1970年代後半からこれまで何度となく、ホームオートメーションやインテリジェントハウスなど住宅のIT化の夢を追ってきた。しかしその多くは研究開発段階で終わってしまい商品化までは至っていない。また例え商品化されたとしてもまったく普及の兆しさえ見えなかった。 2000年代に入ってネット家電や携帯電話を使った住宅関連モバイルサービスが始まり、住宅IT化にまた新たな波が押し寄せている。まだまだ住宅産業関係者や住まい手の関心は高くはないが、家族の一人一人が携帯電話を持ち、家庭でのインターネットのブロードバンド常時接続が当たり前といった時代になり、今度の住宅IT化の波はどうやらホンモノなのではないかと受け止めている人も少なくない。 この新しい波は、これまでのものと大きく異なっている。それゆえ普及する可能性が高いのであるが、その違いを理解するために、これまでの先人達の夢と消えた住宅のIT化努力を振り返って見ることにする。 日本の電卓メーカーの依頼がきっかけとなり、1974年インテルが4ビットの世界で最初のマイコンを開発した。1970年代末になるとアップルやコモドールなど8ビットマイコンを使ったパソコンがアメリカで市販されるようになり、日本でも輸入が始まった。さらに1978年には家電製品へのマイコンの搭載も始まり、マイコン洗濯機、マイコン電子レンジ、マイコンミシンなどが賑やかに登場した。 当時のアメリカのポピュラーサイエンス誌には、すでにその8ビットのパソコンを核として、住宅の中に情報ラインを張り巡らし、さまざまな機器を集中制御するといったホームオートメーションのアイデアが掲載されている。 80年代に入ると松下電器産業、日立製作所など家電メーカーの多くはホームオートメーションの技術開発モデルをそれぞれの会社の技術展で発表した。冷蔵庫の残り物をチェックし、それらをベースにできる料理の献立を示し、その中の料理を選ぶと足りない食材のリストがプリントされ、さらに調理方法を映像で教えてくれるなど、未来の暮らしということで今でも出されるようなアイデアは、もうこの時代にほとんど登場している。しかしそのほとんどは所詮家事のことなど一切やらない男どもが考えたこと、実際の利用者である主婦達の評判は芳しくなかった。 パソコンで家計簿、これもそうしたアイデアの代表的なものである。いったい男達は何パーセントの主婦が家計簿をつけているか知っているのかと言われながらも、懲りずにホームオートメーションの定番としていつも登場してきている。 1980年代中頃になるとホームバスの標準化が始まった。ホームバスというと浴槽としばしば間違えられたが、こちらの方は乗合バスのバスである。機器の制御データを始めとする住宅のさまざまな情報を運ぶ乗合バスで、HBS(Home Bus System)と名づけられた。HBSでは機器を制御するためのオペレーション・コードの規格が、考えられる全ての家庭用の機器を対象に制定された。しかしその規格はあまりにも緻密すぎて、実際には利用されなかった。 HBSに乗せるデータは機器の制御だけでなく、スケジュール管理などマネジメント、セキュリティー、AVなどエンターテイメント、コミュニケーションなどさまざまで、ホームオートメーションといった呼び方では馴染まなくなってきた。そのため住宅の情報化とか情報化住宅などといった言い方がなされるようになってきた。ヨーロッパではインテリジェント・ハウス、アメリカではスマートハウスと呼ばれている。 そして1990年代後半からインターネットが住宅にまで普及し始め、HBSに代わってインターネットによってこうしたデータを流そうといった試みが始まった。ネット家電もその一つで、いずれ住宅の中の全ての機器がIPアドレスを持ってインターネットにつながる時代がやってくるだろうと考える人も出てきている。 |
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これまで成果が出せなかった理由 |
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| しかしインターネットを通じて行われようとすることは、今のところ20年前に考えられたこととあまり変わってはいない。ホームオートメーションがブームとなった20年前、そして10年前のインテリジェント・ハウス、なぜ芳しい成果を挙げなかったかを反省してみる必要がある。 まず第一に「そんなに便利になってもしょうがない」といったこれ以上の自動化に対するニーズの無さが挙げられる。不便を感じていないものを、自動化して便利でしょうと言われて同意できないというわけである。 第二には「機械に任せすぎると人間が退化してしまう」といった不安がある。すべて機械任せでは体がなまってしまい、機械の支えがなければ暮らせないようになってしまう。 第三には「個々の家電製品が賢くなれば、家全体を賢くする必要はない」といった問題である。 第四には「情報化以前に電動化が必要である」といった問題である。カーテンを外出先から開け閉めして、留守だとわからないよう演出しようとしても、そのためにはカーテンをモータードライブにする必要がある。IT化のコストは安いかもしれないが、電動化のコストは相当高く、家中のもの全てをリモートコントロールするとなると何千といったモーターが必要となってくる。 第五には「既存の製品をそっくり取り替えなければ導入できない」といった問題である。新規購入費用の高さだけでなく、使い慣れたものを捨てなければならないので、いくら便利になるといってもなかなか取り替えるというわけにはいかない。
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今度のネット住宅(Connected Home)は離陸するか |
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| 10数年前と現在との大きな違いに、音声だけでなく画像や動画も送ることができるインターネットがあること、さらにどこでも使える携帯電話が身近にあることである。しかもこの携帯電話はインターネットが使え、どこでも、いつでもネットワークに繋がるといったことを可能にした。 ホームオートメーションやインテリジェント・ハウスと区別するため、イギリスではConnected Homeといったうまいネーミングが考えられた。ConnectedHomeはネットワークにつながった住まいといった意味であるが、これを日本語にするならばすでにネット家電という言葉が使われているので、ネット住宅と名づけるのがいいのだろう。 わが国で個人向けのインターネット接続サービスが始まったのは、1994年のことである。その都度アクセスポイントに電話をかけてインターネットに接続するダイヤルアップ接続で、接続スピードは遅くしかも電話料金を気にしながらのインターネット利用で、利用者の数は極めて少なかった。 ADSLが2001年頃から普及が始まり、2004年には1,000万世帯以上で利用されるようになった。ダイヤルアップ接続では速くても56キロバイトであったものが、数メガと50〜100倍といったスピードでのブロードバンド接続がADSLで可能となった。また2001年には、住宅向け光ファイバ・アクセスサービスが始まり、ベストエフォートで1 0 0 メガ、実行スピードでADSLのさらに数倍といった接続が可能となった。こうして1994年からたった10年で、インターネットは情報インフラとして電話に代わりその主役に付くことになった。 さらにこのネットワークは、大きな投資をすることなく、だれでもが自由に、しかも特別な技術がなくても使うことができるのも特徴である。そのため住宅メーカーや工務店など、より消費者に身近にいる人の発想で、ネットワークを使ったサービスを始めることができるようになり、これまでのような技術者のアイデア倒れではない現実的なビジネスとなるはずだ。 以前ならば大変な仕掛けが必要であったが、最近ではだれでもが容易に、住宅内に設置されたカメラの画像を携帯電話で見ることができるようになっている。カメラと人体感知センサーと組み合わせておけば、住宅内に誰かが侵入した際には、その様子を住人の携帯電話に伝えることができる。もちろん外部に設置した防犯フラッシュライトとの組み合わせも可能である。また留守番しているペットの様子を携帯電話で見ることができるといったサービスも始まっている。 ホームオートメーションなど住宅そのものの自動化は、必要なコストも高く住まい手に受け入れられなかったが、ネットワークを利用した生活支援サービスは、費用もそれほど高くなく多くの人に受け入れられそうである。 |
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ネット住宅(Connected Home)の開発 |
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@eHIIハウスでのネットワーク・サービス |
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| 松下電器産業は、1999年からデジタルネットワーク時代に社会システムとつながる家庭内ネットワークの開発や、その標準化活動、事業化促進を目的とした「HII(Home Information Infrastructure:家庭内情報基盤)ハウス」を東京都品川区のマルチメディアセンターに開設し、ネットワーク技術を用いたくらしのコンセプトを具体的に提案してきた。 | |||||||||
AJEITAハウスでのネットワーク・サービス |
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| 1999年から始まった経済産業省のナショナルプロジェクト「住宅分野の情報システム 共通基盤整備推進事業」の3ヵ年事業の総括として、情報家電の最新の商品やサービスアプリケーションを実際の家に組み込んで、体感的に、情報家電の可能性と楽しさ有用性の理解を得て、情報家電を新しい産業として急速に立ち上げる目的でJEITAハウスが建てられた。 「今すぐ手に入る未来」をスローガンに、注文があれば受注もできる現実的な技術とサービスを具体的な形で展示している。アプリケーションには、教育、医療、セキュリティ、宅配サービス、自動発注システム、癒し、エンターテイメント、家族コミュニケーション、自動車との連携、家庭用機器遠隔操作、大阪弁も理解する音声認識による制御、ライフスタイルを分析したエージェントシステムなどさまざまな応用事例を具体的に実演している。 | |||||||||
Bサムスンのサイバービレッジ |
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日本よりブロードバンドの普及が数年早い韓国では、すでに2000年には多くのインターネット・マンションが建設されている。ソウルのマンションで70%程のシェアを持つサムスンは、ホームオートメーションなど先進な装備をした箱物といった単なるマンションの供給だけでなく、自ら生活のトータル・サービス・プロバイダーになり、ショッピング、セキュリティ、エンターテイメントなどさまざまな生活サポートビジネスをサイバービレッジとして展開している。
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ネットワークを介した生活支援サービス |
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| このようにネットワークを通じて、これからさまざまな新たなサービスが住宅向けに始まってくる。モデルハウスで想定されたものや、すでにその兆しがあるものをまとめると次のようなものが挙げられる。 | |||||||||
@快適生活支援サービス |
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| より快適な暮らしをするため、エアコンなどのスケジュール運転やブラインド、換気扇、照明などの集中制御・連携制御を行う。 | |||||||||
Aエネルギーマネジメント |
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| 照明や家電の最適制御により省エネルギーを実現する。ピークカットなど契約電力のデマンド制御を行い、電力需要全体の平準化を図る。さらに電力、ガス、水道使用量モニターを行い、浪費を減らし省エネルギー目標を達成する。 | |||||||||
Bセキュリティーサービス |
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| 不審者の侵入、火災・ガス漏れを監視し、異常があればあらかじめ設定された携帯電話などに、部屋の様子を写した画像データとともにインターネットを介して送るといったことも、警備保障会社を使わず、5万円程度の装置を設置するだけで可能になってきている。 | |||||||||
Cホームヘルスケアシステム |
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| 健康管理サービスや高齢者生活支援サービス、在宅医療機器監視・制御といったことも、病院や高齢者ケアサービス会社がインターネットを介することによって、容易に始めることができる。 | |||||||||
D機器リモートメンテナンスサービス |
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| 住宅内機器の遠隔故障診断、保守もインターネットを介することによって容易になる。すでにガス会社は、ガス機器のエラーコードを統一しており、ネットワークを介して、故障の状況を伝え修理に必要な部品を持って駆けつけるといったサービスをいつでも始められるようになっている。 | |||||||||
Eモバイルサービス |
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| 住宅内機器の運転状態を遠隔モニターしたり、住宅内の機器を遠隔操作、さらに遠隔施錠操作といったこともインターネットを介して携帯電話で行えるようになってきている。 |
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Fハウスキーピングシステム |
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| 自動掃除ロボットは、すでに人気を集めており、留守中に部屋の掃除をしながら、留守宅を監視しロボットに付けたWEBカメラの映像を携帯電話などに送ったり、逆に携帯電話からリモコンで家の中を自在に移動させるといったこともすぐにも実現しそうである。 | |||||||||
Gホームエンターテイメント |
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| インターネットがブロードバンド・アクセスできるようになると、映像配信サービスが可能となる。韓国ではすでに地上波テレビ局の番組がインターネットでそのまま流されている。 | |||||||||
HSOHO |
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| テレワーキング(在宅勤務)もインターネットによってしやすくなってきている。テレビ会議にしてもインターネットで通信料金を気にしないで行うことができる。 | |||||||||
I在宅学習サービス |
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| 家庭学習塾やオンライン教育もインターネットによって、Web-Based Training や e-Learning などとして、より個別対応の学習が可能になっている。 | |||||||||
J在宅ショッピング・予約 |
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| インターネットショッピングも多くの人が利用するようになってきている。特に本の購入に関しては、書店で探すよりはインターネットの方が確実になっている。 | |||||||||
Kコミュニケーションサービス |
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| E-mailだけでなくインターネット電話サービスも可能になり、携帯電話とインターネット電話だけで、固定電話には加入しないといった若者も出てきている。 | |||||||||
L生活ポータルサイトサービス |
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すでに自動車メーカーは、自社の供給する車から直接アクセスできるポータルサイトを運営しているが、戸建住宅分野でも大手住宅メーカーは「生活ポータルサイト」を運営し、単に住宅という箱を売るのではなく、その箱をプラットホームとしてさまざまな生活支援ビジネスを展開していく可能性が高い。
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誰がサービス・プロバイダーになるか |
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| ネットワークを介した生活支援サービスを始めるには、技術的な問題はほとんど解決しているし、インターネットなどの情報インフラも利用できるので、大きな投資を必要としていない。もはや誰が魅力的なサービスを開発し、サービス・プロバイダーとして名乗りを上げるかの段階と言える。 家計消費に占めるモノ消費とサービス消費が逆転したのは1991年で、2003年にはサービス消費が57%、モノ消費は43%となってしまっている。こうした流れを受けて、住宅メーカーも生き残りのためには、住宅と いったものづくりを担う「住宅産業」から住まいと暮らしの支援サービスを担う「生活産業」へ舵を切るべきであると多くの人が気づいている。しかしモノづくりとサービスでは、ビジネスの仕組みが違うので、なかなかその先に踏み込めないでいる。 サービスには、情報の受け渡しだけで済むもの、物の受け渡し、さらに人手による作業まで伴うものまである。いずれにしてもそれらを自らやるのではなく、サービスを標準化し、アウトソーシングすることになる。情報だけならばアプリケーション・サービス・プロバイダーが活用できるし、物の受け渡しならば宅配便など既存のデリバリー・システムが活用できる。 人手によるサービスまで伴うにしても、損保会社が自動車修理工場をネットワーク化しレスキュー・サービスを行っているように、アウトソーシングは可能である。作業の標準化、アウトソーシング先のトレーニングとマネジメントが重要で、しかもこれらはITによって効率化が可能となる。 |
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このコンテンツは、ALIA NEWS Vol.89(2005.9)から、原文のまま掲載しております。 |
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