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| 光触媒技術と製品の開発 | |||||||||||||||||||||||||
TOTO総合研究所 佐伯 義光 |
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1 はじめに |
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| 酸化チタンに代表される光触媒は、太陽光に含まれる紫外線を吸収して、有機物を分解したり、基材表面を水に濡れ易くし、防汚、防曇、抗菌、脱臭、空気浄化、水浄化などの機能が得られることから、環境浄化材料として注目されています。 光触媒は、1972年の本多・藤嶋効果の発表により世界的に注目されることになり、その後の超親水性現象の発見によりその応用展開が活発になりました。1994年にTOTOによる抗菌タイルの製品化に始まり、内外装建材、塗料、防曇ミラー、空気清浄器などが製品化され、現在の製品分野は居住空間、自動車、建築・土木などと多岐に亘っています。世界的に見ても、タイルや建築用ガラスをはじめ、自動車ミラーなどその市場は拡大を始めています。 そんな中、2000年に代表的な企業8社が発起人となり光触媒製品フォーラムが設立され、光触媒市場の健全な発展を目的とした活動が展開されています。現在では、産官学が協同してJIS化が進められていますが、欧州などでも同様な標準化の活動が活発で、ISO化を目指した国際的競争も繰り広げられています。 本稿では、光触媒の実用化技術と応用製品の動向を中心に紹介します。 |
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2 光触媒の機能 |
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| 光触媒に光(紫外線)が当たると、「分解性」と「親水性」が同時に生まれます。「親水性」とは、図−1のようにその表面に水玉が出来ないくらいに水になじみやすくなる性質のことです。 「分解性」によって、抗菌、脱臭、汚れ分解など種々の機能が生まれ、更にもう一つの「親水性」が加わることで、「曇り防止」機能や、雨で汚れが落ちる「セルフクリーニング」など、それまで十分とは言えなかった機能が強化されることになりました。
光触媒材料としては、白色顔料として広く利用されている酸化チタンが唯一実用的に使われています。これは、食品添加物として認められるほど安全で、太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線(波長が360〜380nm)で働き、そして無色透明なコーティングが出来るためです。 |
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3 実用化のための機能設計「ハイブリット化」 |
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| 光触媒の機能は光が当たっている時だけに得られるため、光を遮った後も効果が持続するような工夫が求められていました。これを解決したのが、別の材料とのハイブリット化でした。現在実用化されている光触媒コーティングは、その用途に応じて分解性と親水性の発現比率を調整して作られています。 ここでは、ハイブリット化の代表的な事例を示します。 |
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3.1 蓄水性(水を蓄える)物質の添加 |
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| 紫外線照射で出来る親水性状態は不安定で、紫外線照射を止めると高い親水性を保てなくなります。この時、酸化チタンにシリカやシリコーンなどの蓄水性物質を添加することによって、親水性を高めると同時に、高い親水性の状態を長い時間保持させることが可能になりました。これは、酸化チタンの親水化作用により集まった水分を保持するためだと考えられます。また、表面の有機物汚れを分解することで、表面の親水性を高めるという相乗効果もあると考えられます。条件によりますが、紫外線の照射を止めてから1ヶ月以上も高い親水性を保持する性能が得られています。 | |||||||||||||||||||||||||
3.2 抗菌金属(遷移金属)の添加 |
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紫外線照射で生じた分解作用も、紫外線照射を止めると次第に弱まります。この時、銅や銀などの抗菌金属(遷移金属)を光触媒に担持することで、分解作用の向上と維持を可能にしました。表−1に示すように、金属を担持した光触媒抗菌タイルは、紫外線が当たらなくても抗菌効果があることが分かりました。特に抗菌性が求められる現場では、紫外線が当たらないときでも常に抗菌性が求められますので、これは非常に大切な技術です。
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4 光触媒のコーティング技術 |
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| 光触媒反応は酸化チタン表面で起きるので、製品の表面にコーティングする技術が非常に重要です。製品の意匠を損なわないために、出来るだけ薄く、均一透明にコーティングすることが必要です。また、製品によって様々なコーティング技術が求められます。 まず第1にタイル・建材へのコーティングですが、このような窯業系材料は600℃以上での高温処理が可能なため、これらの表面に酸化チタンやシリカを混合したコート剤を塗布し、熱処理する方法が利用できま す。 第2にガラスへのコーティングですが、通常のソーダライムガラスは550℃程度で軟らかくなるために上記方法は利用出来ません。そのため、有機チタネート化合物ををガラスに塗布して、450℃以上で熱処理する方法があります。 第3として、もっと耐熱温度の低い樹脂のような材料に対する、酸化チタンとバインダーを混合したコート剤を用いる方法があります。このコート剤は、バインダーの硬化を利用して酸化チタンを固め、基材表面に光触媒薄膜を形成します。 この他にはドライプロセスによる方法があります。真空系を含む大型設備が必要ですが、原子レベルでの制御が可能で特徴的な製膜が可能なため、検討されています。 このようなコーティング技術の進歩が、応用製品分野の拡大につながっています。 |
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5 光触媒の応用製品開発 |
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光触媒製品を分類したものを表−2に、光触媒製品フォーラム会員企業のアンケートをもとに算出した分野別事業規模の割合を図−2に示しました。外装用、内装用の建設資材が最も大きな市場規模を持っています。その他には、道路資材、浄化機器用のフィルター、生活用品などがあります。市場規模はまだ決して大きいとは言えませんが、年率10%を超える成長性の高い分野であることには間違いありません。
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5.1 外装材、道路資材への応用 |
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| 外装材や道路資材は、汚れの負荷が大きい屋外で使われますが、通常のものと比較して効果が明らかなこともあり、その用途は拡大しています。建築用外装材としてタイル、塗料、テント材など、道路資材としては、高速道路の透明遮音壁、トンネルの照明などがあります。窓ガラスへの応用は、アメリカのPPG社からセルフクリーニングガラスが発売されるなど、本格的な市場が形成されようとしています。 光触媒には、美観維持、洗浄コスト等のLCC(ライフサイクルコスト)低減、NOx浄化などが期待出来ます。図−3に、実際に施工された外装タイルの汚れの比較を示しましたが、その効果は明らかです。光触媒タイルは、1998年の発売以来非住宅の建物を中心に現在まで5,000件以上の採用実績があり、最近では戸建住宅への採用も急増しています。
光触媒タイルはNOxを除去するはたらきを有していますので、地球環境にどのような影響を与えるかを、LCA(Life Cycle Assessment, JIS Q 14040)評価を行いました。LCAは、原材料調達から設計・製造、使 用、リサイクル、そして最終的な廃棄処分にわたって、製品の使用する資源やエネルギーと、製品が排出する環境負荷を定量的に推定・評価し、さらに製品の潜在的な環境影響を評価する手法です。図−4には、外装タイルの施工面積を5,000m2、寿命を40年としてLCA評価を行ない、従来タイルとの比較を行なった結果を示しました。
製造、輸送、処分の各ステージでは、従来タイルとほとんど同じですが、使用ステージでNOx、SOxを除去するため、全体での環境負荷がマイナスとなりました。環境に負荷を与えるのではなく、負荷を低減することがわかります。すなわち、使用量が増えるほど、地球環境にとって「やさしい」製品と言えます。 尚、屋外の建物や親水施設で問題になるカビや藻類などの微生物汚染に対する効果も期待できますので、水利用施設用途に向けた「分解力」を高めた光触媒防藻タイルも発売されています。 |
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5.2 内装材への応用 |
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| 内装材としては、タイル、建材、塗料、壁紙、ブラインドなどへの応用が進んでいます。従来の有機物分解性(抗菌性)に超親水性による易洗浄性が加わり、キッチンの油汚れや浴室のアカ、石鹸カス汚れがつきにくく、また水で簡単に洗い落とせる性能を持っています。そのため、パブリックトイレや大浴場、厨房、手術室から一般家庭のキッチン、トイレ、浴室洗面所など幅広く使用されています。 その他、自動車サイドミラー用防曇性ミラー、ミラーフィルム、ロードサイド看板、ALC建材へ防汚機能を付加した製品などが開発されています。 |
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6 おわりに |
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光触媒技術およびその製品は、地球環境保全、景観維持、建物の長寿命化などの社会的ニーズに貢献するものと期待されています。図−5に光触媒の用途展開を示しましたが、NOxやダイオキシン、VOC、環境ホルモンなどの有害物質を分解浄化する環境浄化材としても盛んに実用化に向けた検討が多方面で進められています。光触媒技術の研究開発は、可視光や微弱紫外線光に応答する材料開発が活発で、その実用化により用途が拡大することが期待されています。また、基材を光触媒から保護し且つ耐久性のある数10nmレベルの透明薄膜形成技術やプロセス開発などが挙げられます。
一方、光触媒の機能や性能の統一された評価方法を早期に確立する必要があります。光触媒は海外でも注目を集めており、日本発の技術を日本がイニシアチブを取り、早い段階で国際標準にまで持っていかなければならないと考えています。 |
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このコンテンツは、ALIA NEWS Vol.89(2005.9)から、原文のまま掲載しております。 |
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