創立15周年記念ネットフォーラム
  
      住産業に係る新技術の動向について
本格的高齢社会に対応した社会保障の構造変革と民間参入への期待

(社)シルバーサービス振興会 企画部長  久留 善武


1 本格的な少子・高齢社会の到来と社会保障制度の総合的改革

(1)社会保障制度改革の方向性
 我が国では、晩婚化の進行などを背景に少子化が進行する一方、急速な勢いで高齢化が進んでおり、65歳以上の高齢人口は2015年には総人口の26%を突破し、2054年には36%に達することが予想されている。この結果、今世紀半ばには、総人口は現在より約2割減少するとともに、世界に類を見ない少子・高齢社会が到来することになり、これが今後の社会経済の様々な場面に深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。
 こうした人口構造の変化や今日的な社会経済の情勢の中、国民生活における社会保障制度の役割、経済や雇用との関係、家族や地域社会のあり方を踏まえつつ、21世紀の日本社会にふさわしい社会保障制度の総合的改革が進められている。基本的な方向としては、@年金、医療、福祉等の各制度間の機能分担を明確化し、横断的な再編成等による全体の効率化を図る。A個人の自立を支援する利用者本位の仕組みを重視する。B公私の適切な役割分担の下で積極的に民間活力の導入を促進する。C高齢者世代と現役世代の間の均衡や資産を持っている人と持っていない人との間の均衡を図ることなどが挙げられている。 
 このように、個々人に対する給付と負担のあり方を見直し全体の公平・公正の確保を図ること、情報開示・情報提供の徹底を図ることなどにより社会保障制度全体を国民にとって分かりやすくすること、継続的・安定的な制度とするための効率化を図ることなどが目指されており、これらは全て従来の健康・介護・福祉の分野においては時代を画す制度的な技術革新が進められているといってよい。
 今後の健康・介護・福祉サービスの提供において、社会保障改革のリーディングケースと位置づけられている介護保険制度の方向性は、こうした制度的な技術革新の方向性を見定める上で注目される。また、今後の介護・福祉及び健康サービス分野では、実施主体としての位置づけはもとより、さまざまなサービスや商品の開発において民間の積極的な市場参入が期待されている。本論では、こうした方向性を解説しつつ介護・福祉分野を中心としたシルバーサービスへの期待を論ずることとした。

(2)介護分野等への民間的経営手法の導入とシルバーサービスの振興
 現在、我が国では社会経済の各分野で「構造改革」が叫ばれている。こうした改革の流れは、1980年代にイギリスにおいて提唱され先進国に浸透したNPM理論(New・Public・Management:新公共経営理論)が源流となっているといえる。小泉政権の下での「小さな政府」、「構造改革」、「規制緩和」の議論のように、公的部門に民間的経営手法を導入するというものであり、具体的には@主体規制の撤廃による多様な主体の参入促進(市場原理の導入)、A利用者主権に基づく選択(自己決定)、B情報開示の徹底などが重要な要素となる。
 我が国において、高齢者向けのサービスや商品の供給に積極的に民間参入を促進する取組みが始まったのも1980年代に入ってからである。増大する介護需要に対応して、有料老人ホームや在宅サービスなどの分野で既に民間参入が始まっていたが、国として本格的に取り組まれるようになったのは、1985年に当時の厚生省(現在は厚生労働省)がシルバーサービス振興指導室を設置し、経済界とともに1987年に社団法人シルバーサービス振興会を設置した頃からである。これまで市町村や社会福祉法人がサービス提供主体であった分野に民間の参入の基盤整備を進めるために、行政による許認可ではなく、民間自身による創意工夫と社会的信頼の確保のための健全育成方策、サービスの質の確保が官民一体となって取り組まれて来た。


2 介護保険制度の導入による介護市場の拡大とシルバーサービス

(1)介護保険制度の現状と課題
 介護保険制度は2000年4月から施行されたが、既に国民の老後の不安要因である「介護」を支える仕組みとして国民生活に深く浸透してきているといえる。施行後5年を経て、利用者数は在宅・施設を合わせて400万人に達し、中でも在宅サービスの利用は250万人以上へと急増し、現在も1ヶ月平均3万人のペースで増加が続いている。
 一方、サービスの供給量については、営利法人やNPO等の非営利法人の参入や既存の事業者のサービス拡大とも相俟って急速に増加し、実稼動事業所数(実際に介護サービスを提供し介護報酬の請求をしている事業所)は既に13万事業所に達している。
 しかしながら、サービスの利用が急速に増加したこと、制度の普及や権利意識の高揚が進んできていること等に伴い、事故や苦情が増加してきているのも事実である。これに加えて、サービス提供における不適正事例や悪徳事業者の指定取り消しなども顕在化しつつあり、「サービスの質」をめぐる問題が大きな課題となってきている。

(2)介護保険制度における制度的技術革新とシルバーサービス

@介護保険制度の見直しの方向性
 こうした状況を踏まえ、国では、介護保険制度に関する全般的な見直し作業が進められている。既に改正介護保険法が平成17年6月22日に国会を通過し、現在は政省令による具体化及び介護報酬の改定作業に関心が集まっている。
 今回の見直しの中で、最も重要かつ基本的な課題は、将来を展望した制度としての持続可能性である。現在の介護保険の総費用は2005年度予算ベースで既に6.8兆円に達している(施行時は3.6兆円であり急激に拡大してきている)。今後、さらに高齢化が急速に進展することを踏まえると、社会経済への影響も深刻化しつつあることから、「給付の効率化・重点化」が大きな課題となってくることは間違いない。
 また、今後の高齢化の進展(2025年には高齢者人口が3,500万人)、痴呆性高齢者の増加(2015年には250万人に増加)、独居世帯の増加(2015年には570万世帯に到達)に対応して、介護サービス供給の基盤整備の進展、介護予防の推進の効果などを踏まえたサービスモデルの予防重視型システムへの転換、「量」から「質」へのサービス改革などを基本的な視点とした介護保険制度の見直しが検討されている。

A予防重視型システムへの転換
 介護保険制度の施行後5年間の状況をみると、要介護認定において比較的軽度の状態とされる「要支援」、「要介護1」の利用者が大幅に増加していることが一つの特徴とされる。
 しかしながら、この軽度者に対する介護サービスの提供が必ずしも状態の改善につながっていないとの指摘があった。これは、これまでのサービスモデルが寝たきり等の重度要介護者へのサービスを前提としたものであり、軽度者の機能維持、重度化防止という視点での介護予防が十分に機能していないことが明らかになってきたということである。このため比較的早い段階から、そもそも介護が必要な状態にならないよう、またはたとえ介護が必要な状態になっても比較的早い段階から、介護予防のサービスモデルを導入することにより、要介護状態等の軽減、悪化防止に効果的な軽度者を対象とする予防重視型システムへの転換を図ろうというものである。こうした介護予防においては、転倒防止、リハビリテーション、栄養改善、口腔ケアなどをはじめとしたサービスメニューが考えられているが、民間において蓄積されたデータや技術力を活かしつつ創意工夫に基づくサービスや商品の開発が期待されている。

B介護保険の基本理念と消費者保護
 介護保険制度においては、「高齢者の尊厳の保持」、「利用者本位」、「高齢者の自立支援」、「利用者による選択(自己決定)」を基本理念として、利用者は必要なサービス(事業者)を自ら主体的に選択・決定して、事業者との直接契約により利用する仕組みとなった。また、高齢者自身も保険料負担やサービス利用における自己負担を行うことにより、負担と給付の関係が明確になった。このことは、利用者と事業者が契約の当事者として対等な立場で直接向かい合う関係となったということであり、保険者(市町村)による制度運営や介護サービス事業所の経営に利用者の選択が大きな影響を及ぼすことになったということなのである。
 こうした変化は、利用者である高齢者等のサービス利用に対する「権利意識」と「コスト意識」を高めることにつながっている。その一方で、苦情や介護サービスが普遍化する中、サービスの質や内容に関する苦情が拡大している。その主なものには「説明・情報の不足」や「従業者の態度」を指摘するものが多い。さらに、近年では、高齢者に対する虐待の問題や、認知症高齢者をはじめとして高齢者の消費者被害の問題も大きな社会問題になりつつある。このように、高齢社会においては、社会全体として高齢者の尊厳の保持とともに権利擁護の取組みを推進していくことが大きな課題となってくる。

C規制緩和の中でのサービスの質の確保(クオリティコントロール)
 介護保険制度においても原則として主体規制が撤廃されており(事前規制の緩和)、多様な事業者の参入を前提として劣悪なサービス(事業者)を迅速に排除する「事後規制」の仕組みの構築へと向かいつつある。今後は、いわゆる経済的規制としての参入規制は緩和しながら、適正な競争の下で利用者選択を機能させることによりサービスの質の向上や事業の効率化における市場原理を機能させていくこと、利用者保護を前提とした社会的規制を強化し劣悪なサービスを迅速に排除する仕組みを構築することにより、サービスの質の確保を図ることが行政的な重要課題となってくるのである。
 前述のとおり、介護保険制度は従来の措置制度から脱却し、基本理念の下で時代を画すまでの制度的大変革を行った。そうした中で、主体規制は撤廃されたが、これは、どのような主体であれ、常に利用者を大切にしながらサービスの質の確保に取り組む事業者こそが利用者に支持されていくという「市場競争」の下で、不断の努力をしなければならないということでもある。また、利用者は、選択権を得て、事業者との直接契約によるサービス利用が可能となったことで「自己責任」も問われることとなった。
 つまり、介護保険制度の変革は、介護サービスの提供において市場の当事者となる利用者、事業者の双方にも、大きな環境変化をもたらしているのである。

D介護サービス情報の公表(情報開示の標準化)の制度化
 現在、(社)シルバーサービス振興会では、介護保険の基本理念である「利用者の選択」を現実のサービス場面において実効あるものとするため、「介護サービス情報の公表(情報開示の標準化)に関する調査研究」を進めている。改正介護保険法により、平成18年度から、都道府県等の指定を受け、介護サービスの提供を行なっている全国全ての事業所を対象として、一定の情報を自らの責任に基づき公表することを義務付けるという「介護サービス情報の公表制度」がスタートする。こうした利用者の選択の保障がなされることで、介護サービス事業者におけるサービス改善への取組みが促進され、サービスの質による競争が機能することにより、介護サービス全体の質の向上を図ることを目的としたものである。
 このように、規制緩和の中でのサービスの質の確保(クオリティコントロール)においては、利用者自身によるサービスや事業者の選択が大きな影響力を持つことになる。今後の高齢者の医療・介護・福祉分野においてのサービスの質の確保(クオリティコントロール)については、他のサービスや商品の供給と同様、行政の直接的な介入よりは、むしろ利用者の選択に基づく市場機能に委ねることが基本的な方向性であるといえる。

E高齢社会における居住環境整備の重要性
 我が国の介護保険制度は在宅重視を掲げているが、これは、誰しも住み慣れた地域や自宅で可能な限り住み続けたいとの意識からであり、これは普遍的なものであろう。また、要介護状態になった時に自宅での生活の継続を困難にする要因の一つとして居住環境としての「住まい」のあり方が問題となるケースが多い。我が国では、居住環境としての住宅の確保は自己責任を原則としており、購入資金の返済や賃貸額等を考慮し比較的早い時期にマイホームを持つ場合が多く、これが生涯にわたる「住まい」となる。当然、家屋構造や設備等は取得時のままであるため、居住者の加齢に伴う心身機能の衰えに対応できない。  
 この対応策としては、バリアフリー化や緊急通報、福祉用具の活用に対応できるように既存の住宅をリフォームすることや、こうした機能が備わった安心して住める「住まい」を用意し住み替えるといった選択肢を用意することなどが考えられる。この場合、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)などに代表される従来の「施設」だけではなく、利用者個々の生活状況、経済状況、価値観等に基づく多様な「住まい方」と「住まい」が考えられる。
 また、このような新しい「住まい」を開発していくにあたっては、高齢者が介護が必要な状況になっても尊厳ある暮らしが保持できること、ケアの受け皿として機能することなどを念頭においた居住環境整備が重要となる。

F在宅重視の方向性と施設の地域展開
 これまで「施設」に求められてきた機能は、要介護の状態になっても対応できるようバリアフリーの構造設備を持ち、介護等の専門的なスタッフが昼夜を問わず常駐しており、24時間365日の体制で安心してケアが受けられるという「住まい」と「ケア」の総合的なパッケージが確保されることであったといえる。このように常時の介護体制が保証されることを前提に、利用者はこれまでの生活の継続性や家族との同居を犠牲にして入所していたといえる。しかしながら、介護保険制度により在宅の介護基盤が整いつつある今日にあっては、施設入居者であっても地域での生活の継続性が維持できるよう、従来の施設入居か在宅かといった二者選択ではなく、施設に入居しながらでも積極的に地域に出て地域住民や在宅サービス利用者等と交流するなど、在宅の機能と施設の機能が融合する方向性が進んできている。これに伴い、施設の機能を社会資本としてとらえ、地域展開を図っていくことが重要となる。
 また、施設に入居しても在宅のときの生活が継続できるよう、ユニットケアの普及により個別のライフスタイルや生活リズムの確保、プライバシーの保護、私物持ち込み等によって可能な限りこれまでの生活環境を維持することなどが重要となる。


3 高齢社会における新しい消費者像とシルバービジネスへの期待

(1)高齢者の量的拡大のみならず、質的変化(新しい高齢者像)に適切に対応

@シルバーマーケットのとらえ方
 介護分野以外においても、民間への期待は大きい。一般的には、シルバー層向けのサービスというと介護関連サービスといった認識がある。しかしながら、介護保険の受給権者である要介護、要支援状態の高齢者は全体の高齢者の15%程度にとどまり、全体の85%以上は元気で日常のこれまでの生活を維持しながら高齢期を迎えることになるのである。
 しかしながら、加齢に伴う心身機能の衰えは確実に進行することから、高齢社会になると、建物、公共空間、まちづくりなどにおけるバリアフリーはもちろん、移動の確保をはじめ、効率化や大量処理を念頭において高度成長期に築きあげられた既存の社会システムも高齢化対応をしなければならなくなる。例えば横断歩道の信号のスピード、駅の改札のスピードなどの公共交通システムは、基本的に若年層に合わせたスピードになっているので、いくら元気な高齢者といえども日常生活の上では不便さや危険が伴うこととなる。この他、色覚や聴覚、身体機能の低下に伴い移動のしづらさを強く感じるようになることから、公共交通サービスの再構築、新たな移送サービスのあり方の検討をはじめ、街中のサイン表示(看板や案内版)、マスメディア、広告などの情報伝達においても、色使いやスピードなどについての再検討が必要となってくる。これらは、ユニバーサルデザインとして取り組みが始まっている分野でもある。
 このように、今後の消費市場においては、シニア層、シルバー層の影響力が急速に拡大し、あらゆる業界において高齢化対応が求められるようになることから、21世紀は「高齢者の世紀」ともいわれる。

A高齢者の質的変化(新しい高齢者像)
 現在の65歳以上の高齢者の構成をみると、大正生まれと昭和一桁世代が中心であった時代から、2005年以降は昭和一桁生まれ〜昭和10年代生まれの高齢者が中心となる過渡期である。さらに、2015年以降にはいよいよ団塊の世代(第一次ベビーブーム世代)が高齢期に突入する。
 こうした新しい高齢者層は、高度経済成長期に自由で豊かな時代を経験し、人生観や日常生活上のあらゆる価値観が多様化、高度化しており、サービスや商品に対して厳しい目をもって選択をする消費者でもある。
 また、旅行やファッションをはじめ趣味や生きがいを持ち自由に余暇を楽しむ高齢者である。健康や介護への不安を抱えるものの、これに立ち向かい積極的に健康増進・介護予防に取り組む高齢者でもある。さらには、子供や孫はもとより自らの老後生活設計のために、これに必要な資金を積極的に準備する高齢者なのである。さらには、学習意欲や就労意欲が高く、積極的に社会に参加し、自らのライフスタイルを自ら選択し、築き上げていく新しい高齢者像をもった人々なのである。

(2)高齢社会に対応した生活環境整備の重要性
 高齢社会において、高齢者が住み慣れた地域で社会参加しながら安心して暮らし続けていくための政策として、政府の『高齢社会対策大綱』や「第八期住宅建設五箇年計画」等において、「居住水準の向上を図り良質で豊富な住宅ストックを形成し、個人のライフスタイルの変化に対応した住み替えを可能とするなどの住宅市場の環境整備等を推進するとともに、子との同居、隣居等の多様な居住形態への対応を図ること。高齢期における身体機能の低下に対応し自立や介護に配慮した住宅及び高齢者の入居を拒否しない住宅の促進を図るとともに、福祉施策との連携により生活支援機能を備えた住宅の供給を推進すること(シルバーハウジングプロジェクト等)。自宅から交通機関、まち中までハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を図ること(高齢者に配慮したまちづくりの総合的な推進)。交通事故、犯罪、災害等から高齢者を守ること。」などの方向性が示されている。
 また、2004年には『高齢者の居住の安定確保に関する法律』(以下「高齢者居住法」という。)が施行され、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録・閲覧制度、高齢者向けのバリアフリー化された優良な賃貸住宅の供給の促進、終身建物賃貸借制度の創設、持家のバリアフリー化を支援する特別な融資制度の創設等を行い、高齢者の居住の安定確保を図ることが目指されている。
 こうした生活環境整備と社会保障制度としての医療や介護サービスとの関係は今後ますます重要性を増しており、省庁間の制度の枠を超えた対応が進められている。

(3)高齢者の安心した暮らしのために(まとめにかえて)
 このように、社会経済の各分野において20世紀に構築されたシステムは既に機能不全に陥り始めている。しかしながら、このことは皮肉にもこの世紀を支えた人々の高齢期の社会基盤が危うくなることにつながってしまうこととなる。そして、こうした将来への不安が消費を抑制し、経済の活性化を阻んでいるといっても過言ではない。しかし、国民は身近な暮らしの中から生まれるニーズの解決や、ちょっとしたゆとりや楽しみには、積極的に消費をしているのである。
 したがって、高齢社会におけるシルバーサービス事業者にとって、真に高齢者に必要なサービスや商品が開発されているのか、消費者としての高齢者に真摯に向き合ったサービス提供を行っているかが問われるこ
とになる。また、今後、サービスや商品が多様化すればするほど、消費者問題の心配は増大することとなり、シルバーサービスを健全に育成・発展させていくための鍵を握るのは、こうしたサービスや商品を選択する利用者自身であるといえる。そのために、利用者の選択を適正に機能させるための、情報開示の徹底、苦情・事故対応、劣悪なサービスを迅速に排除する事後規制など、「サービスの質」を担保するための公正な市場ルールの確立が、今後ますます重要となる。
 これまでみてきたように、現在の健康・介護・福祉の分野では、従来の措置制度の下では成し得なかった様々な変革の動きが始まりつつある。これは、まさに制度的な技術革新であるといえよう。世界に類を見ない高齢化のトップランナーとしての我が国においては、民間活力を活用しながら様々なサービスや商品が開発されつつあり、「高齢社会の下での社会保障と市場経済の融合」という全く新しいモデルが構築されようとしている。ただし、いかなるサービスや商品であっても「消費者主権(利用者本位)」をベースにしながら、真に高齢者の安心した暮らしのために役立つものでなければ市場の将来はないことも、関係者一同が忘れてはならない事実である。

このコンテンツは、ALIA NEWS Vol.89(2005.9)から、原文のまま掲載しております。
社団法人リビングアメニティ協会