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住宅部品の基礎知識 アメニティCafe *2023年度版

エレベーターのリニューアルについて

1.エレベーターのリニューアルの必要性

エレベーターにおいては、性能の維持、故障の低減など安全性や快適性の維持・管理を目的として、設置年数や走行時間に対応したメンテナンス(点検、調整、部品交換及び修理)を定期的に行っています。

しかし、適切なメンテナンスを行っていても使用部品の摩耗・劣化あるいは部品の製造中止など、物理的な理由によって所期性能を維持することが難しくなります。また、耐震安全性の強化など様々な社会的要求の変化や法令改正等により、エレベーターに求められる機能・性能は年々高くなってきています。

より安全、安心、快適にエレベーターを利用していただくためには、「エレベーターのリニューアル」が必要です。

2.建築設備の耐用年数

一般的に建築物の寿命は50~60年といわれていますが、建築設備にも耐用年数があり、適切な時期に修繕をする必要があります。

エレベーターも他の建築設備と同様に、計画的なリニューアルが必要です。(図1参照)

図1建築設備の耐用年数(図1:一般社団法人日本エレベーター協会提供)

3.エレベーターの耐用年数、リニューアルの時期

エレベーターの減価償却上の法定耐用年数は17年と定められています。またエレベーターメーカーにより異なりますが、主要な装置の耐用年数はおおむね20年となっており、部品供給期限も25年間程度となっています。
(図2参照)

図2エレベーターの耐用年数とリニューアル時期(図2:一般社団法人日本エレベーター協会提供)

4.社会的要求の変化

エレベーターに求められる機能や安全基準などの社会的要求も年々変化しています。耐震安全性の強化、バリアフリー対応、安全基準の制定・改正などの社会的要求にこたえることは、建物の安全性や快適性向上のためにも重要です。
(図3参照)

エレベーターは、建物内の重要な縦の交通手段です。計画的・効率的にリニューアルすることをお勧めします。

図3社会的要求の変遷(図3:一般社団法人日本エレベーター協会提供)

5.リニューアルを実施すれば・・・・

最新のエレベーターへリニューアルすることにより、より安全、安心で快適なエレベーターを居住者・利用者へ提供することが可能になります。また、省エネルギー性や防犯性向上、バリアフリー化・耐震性強化などの観点から、マンション所有者の資産価値向上にも寄与します。(リニューアルによって、次の①から⑦のような
機能・性能の向上が考えられます。)

  • ① 安全・安心:乗降時の安全機能、乗車時の安全機能、有事の際の安心機能
  • ② 利便・快適: インフォメーション機能、かご内環境の改善
  • ③ 省エネルギー化: インバータ制御方式の採用、LED照明の採用
  • ④ 防犯・防災: 防犯カメラや各種管制運転の付加
  • ⑤ バリアフリー化: 車いす兼用仕様、視覚障がい者仕様、聴覚障がい者仕様の付加
  • ⑥ 耐震性強化: 最新耐震基準の適用、地震感知器の設置
  • ⑦ 最新基準の適用: 最新機能採用による安全性の向上、現行法令への適合(既存不適格の解消)

なお、リニューアルによる機能・性能の向上の詳細については、エレベーターメーカーへご確認下さい。

6.現行法令への適合(既存不適格の解消)について

既存の建築物に設置されている既設エレベーターにおいて、設置された当時の法令には適合していたが、その後の法令改正により現行法令に適合しない部分が生じる場合があります。これがいわゆる「既存不適格」です。

このような場合の既存建築物に対して、新たに定められた法令の規定が適用されないことが、建築基準法第3条第2項で定められています。この規定により、現在使用されているエレベーターは継続して使用することができます。

ただし、法令で年1回実施することが義務づけられている定期検査では、「既存不適格」と指摘されます。耐震性、安全性の向上の観点からも既存不適格を解消するリニューアルを実施することを推奨いたします。

施行年月日 主な改正内容
平成21年9月28日
  • ・戸開走行保護装置の設置義務付け(ブレーキの二重化)
  • ・地震時管制運転装置の設置義務付け
  • ・駆動装置の耐震対策強化
平成26年4月1日
  • ・釣合おもりの脱落防止構造の強化
  • ・地震等に対する構造計算の規定追加

7.リニューアルの方式

エレベーターのリニューアル方式には、「全撤去リニューアル」、「準撤去リニューアル」および「制御リニューアル」があります。

  1. (1)全撤去リニューアル

    既設エレベーターの関係機器を全て撤去し、エレベーターを新設するリニューアル方式です。
      この方式は、準撤去リニューアルや制御リニューアルと比べ、長い工期を必要とします。全ての関係機器を新設するので、現行法令への適合(既存不適格の解消)ができます。

  2. (2)準撤去リニューアル

    ガイドレール、のりば出入口の枠(三方枠)や敷居等の一部の既設機器を活用し、それ以外の機器(かご室一式、釣合おもり、巻上機、制御盤等)を入れ替えるリニューアル方式です。
      この方式は、建物の躯体に取り付けた機器等を活用するため、全撤去リニューアルに比べ工期は短くなります。

  3. (3)制御リニューアル

    エレベーターの制御関連機器(制御盤、電動機等)を中心に、機器を入れ替え制御方式を更新するリニューアル方式です。制御方式の更新とあわせ、車いす兼用仕様、地震時管制運転、停電時自動着床装置等の仕様・装置を付加することも可能です。

    この方式における工事範囲は、エレベーター機械室が中心となるためリニューアル工事範囲が狭く、また建築関連等の付帯工事がほとんどないことから、全体工期も短く設定できます。

    ただし、既設エレベーター機器が多く残ることから、入れ替える機器の内容によっては、「既存不適格」が、解消されない場合があります。

8.リニューアル時の注意点

  1. (1)エレベーターの建築確認申請の提出

    全撤去リニューアルする場合は、建築確認申請を提出する必要があります。
    また、準撤去リニューアルや制御リニューアルであっても建築確認申請の提出が必要な場合があります。建築確認申請の要否については事前に特定行政庁や指定確認検査機関へご確認願います。

  2. (2)建物強度の確認

    エレベーターのリニューアルによって建物にかかる荷重条件が変わる場合には、建物の強度確認が必要になる場合があります。

  3. (3)昇降路の防火区画の確認

    既存建築物への増改築で建築確認申請が必要となる場合には、既存建築物の既設エレベーターを現行の法令に適合させる必要があります。この場合は、防火区画の関係上、エレベーターのりば戸を遮煙性能を満たす構造に変更する必要がある場合があります。

  4. (4)電気設備の確認

    エレベーター動力用引き込み線、遮断器の容量および電線の引き込み経路を確認する必要があります。
    エレベーターの遠隔監視装置等を新たに設置する場合には、専用の電話回線が必要になる場合があります。

  5. (5)リニューアル工事期間中の注意

    リニューアル工事期間中はエレベーターが使用できませんので、ご注意下さい。

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